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AE86試乗記

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Fun2Driveレンタカーでの借り出し第二弾はトヨタ・スプリンタートレノです!しかもあの頭文字Dで主人公が駆った劇中車のレプリカ仕様です。今回はあいにくの雨の中、丸一日の9時間コースを友達とワリカンして借りたので運転できたのは4時間ほど、100kmちょっとと短めです。ただ普段中々触れることのできない貴重なクルマなので書けるだけじっくりインプレします。

(第一弾のR33GT-R編はこちら


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このクルマを語る上でやはり頭文字Dの事は切っても切り離せないでしょう。社会現象までになった頭文字Dは自分も小さい頃から漫画やアニメのみならず、ミニカーやゲームなどでも親しんでおり、免許がまだ遠い車好きキッズ時代の自分にとって多大な影響を及ぼした作品です。並み居る高性能スポーツカーたちを、古くて決して速いとは言えないハチロクでバッタバッタとなぎ倒していく様に熱いものを感じない人なんていないでしょう。一度で良いからいつかあのハチロクのハンドルを握ってみたい・・・とどこか心の奥でくすぶっていた少年時代の気持ちを、あのイニD仕様そのものでという最高の形で果たすことができました。車好き冥利に尽きるですねw

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元はといえばベース車の安さ、シンプルさと素性の良さでホンモノの走り屋たちに定評のあったクルマです。超一流レーシングドライバーがこのハチロクで腕を磨いたという例も結構あって、元々名車としての素質が充分にある車だったのですが、その人気が頭文字Dのお陰で爆発的なものとなり、今やその名声は海を越えて海外にも響き渡っています。現在の国内流通相場を見ると程度の悪い物でもまず100万円は切らない価格で、程度が良ければ400万円近くにまでなるという、30年以上前の大衆車とは思えないカルトクラシックと呼ぶに相応しい一台です。

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そんな貴重なハチロクですが、箱根のFun2Driveレンタカーでは現在9,980円から貸し出しを行っています。自分は9時間コースの20,980円にドライバーひとり追加の2,160円、合計23,140円をワリカンして最高の一日を過ごすことができました。ちなみにコースによって異なる走行可能距離数制限があり、9時間だと最大300kmまででした。R33を借りたときには一部の旧車以外は制限が無かったと思うのですが今は全車に制限があるみたいです。高コストな名車たちを賄うのには仕方のないことかもしれませんが、いっぱい走りたい人はちょっと注意です。

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借り受けの前にはここで無茶をして全損した車たちの写真を見せられるのですがハチロク率が高かったです。ABSやトラクションコントロールなど今では当たり前の電子制御が無いのでナメてかかると痛い目を見ることになるでしょう。この個体でなんと6代目だそうで・・・貴重なハチロクを潰してしまわないように、雨が降っていたというのもあってドライブは結構慎重に行いました。

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今回借りた個体は初度登録が昭和58年(1983)なのでデビュー初年度の初期型ということになります。作中の仕様に倣ってかリアハッチには最上級グレードAPEXのロゴが貼られていますがアナログメーター(これはイニDも同じ)、ノンパワステ、リアワイパーレス、手巻きウインドウ、そしてコーションプレートのカラーコードが038(単色ホワイト)だったので正体は一個下の硬派グレードGT-Vではないかと思います。あまりに古い車のためメーカーのグレード検索が使えないのと、長い年月の間に様々な改修を受けている可能性が高いので断言できませんが・・・。

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昭和のクルマらしく直線基調で、贅肉の無い端正なスタイルです。車幅が162cmとほっそりしているのもよりスマートな印象を際立たせています。余裕の5ナンバーサイズで車重はおよそ940kg。これにグロス値130PSのスポーツエンジンをFRレイアウトというのは、当時としても貴重なパッケージングで、悪く言えば前時代的な構成だったそうです。ライトウェイトFRスポーツは今の時代においても貴重ですし、今後代わりとなるものが現れる可能性はそう高くないでしょう。

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ヘッドライトは今や失われしリトラクタブル式です。クローズ時にはシュッとした顔を、オープン時にはウィーンとせり出してくるメカニカル的ギミックの喜び(謎)を与えてくれます。ヘッドライトレンズが規格物しか使えなかった時代のスポーツカーには流線形ボディを実現できる数少ない手段として重要ですね。写真ではポジションライトのみを点灯した状態ですが、ウインカーレンズと共有された部分にあるオレンジ球が光るようになっているのが今では見かけない珍しい形です。

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フル点灯!バンパー下のフォグランプは作中と同じCIBIEの後付け品です。リトラの動作は開ききるまでに1秒くらい必要なので意外と早いような?いや遅いような・・・といった感じですw
そういえばボンネットがカーボンっぽくなっていますがこれはシートを貼り付けてあるだけです。

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ホイールは前後とも本物のワタナベエイトスポークです(エラい!)。本家は高いのでコピー品がいっぱいあるんですよね。タイヤも限界性能向上を見据えてアドバンネオバAD07と、かなり良いものが奢られています。サスは真っ黒でしたが車高が落ちてるのとリア内装のストラット部がくり抜かれてダンパーが突出していたので、何かスポーツサスが入っているっぽかったです。

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この時代の車としては珍しくさすがのスポーツグレードで、リアもディスクブレーキです。ただし現在の感覚から見ると効きは大差があるとは言い切れないものの、やはり詰めがどうしても甘く感じられ、急制動を試したら中々止まらなくてドキッとしました。今時の車はどんどん重くなっていますがこういう安全に関する部分はやっぱり日進月歩で進化してるんだなぁと実感しました。ちなみに倍力装置はついているのでその点に関しては安心です(レスの旧ミニは怖かった…)。

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マフラーは車検対応の社外品(フジツボ製)がついてました。見た目が大人しくて音も初めはノーマルマフラーなのかと思ってしまったほど静かですが、ドライブ時にはほんのり強調された低周波音を楽しむことができます。車内から聴くよりも車外で聴いた方が快音かもしれませんw

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やっぱりこのロゴがなくっちゃ!そういえば13年前にオーストラリアに短期留学に行かせてもらったことがあるのですが、その中でも未だに強く印象に残っているのがイニDレプリカのパンダトレノが道路で走っていたことです。ちゃんとロゴの“自家用”のところまで再現されていました。

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ラジオアンテナはフロントフェンダー上端に格納されており手動で出し入れします。垂直方向にビヨンと出てくるのはアメ車なんかで今もたまに見かけることがありますが、斜め方向に出すのは初めて見ました。ピラー側に支えなどは有りませんが剛性が高いので問題は無さそうでした。

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ドアは薄くて内張りがのっぺりしています。ちょっとしたポケットこそついているものの大分シンプルです。窓は手回しクルクル。集中ロックは無いので同乗者がいる際には気遣いが必要です。

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内装に移ります。運転席はBRIDEのフルバケットシートに変更されていました。個人的に窮屈なフルバケには苦手意識があるのですが、こちらはちょっとゆったり目にできていて座り心地もよく、運転していて変に疲れるような事もなかったのでこれなら良いかも・・・と思っちゃいました。

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助手席その他は純正です。凝ったシート形状はもちろん、前期特有の赤黒の色遣いがレトロでたまりません。日に焼けてちょっとオレンジっぽくなってしまっている所も非常に味があります。

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運転席回りです。こちらも直線基調。エアバッグが無いのでダッシュボードがすごく薄い!またオーディオのスピーカーがドアではなくダッシュ両端の下側に設置されているのが特徴的です。

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ステアリングは作中仕様と同じ社外品(イタルボランテ)です。メーター周辺のサテライトスイッチやエアコン送風口がドライバーを囲うようになっていてコックピット感が強くてカッコいいです♪

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オーソドックスなアナログメーターはタコが8千回転まで振られています。スピードは100km/h以降が赤くなっていますがもしかしたらその速度域でキンコンブザーが鳴るのかもしれません(悪天候&下道のみのため試せず)。“排気温”のチェックランプが日本語表記なのがシブい。
グレードがGT-APEXだと本当はデジタルメーターなのですが、作中ではなぜかこのアナログメーターになっているのでイニD仕様を作るためにメーター交換をしている個体も多いそうです。

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スイッチ類が汎用品ばかりではなく、こうした車種特有のサテライトスイッチを採用しているところが景気が良いというか、時代を感じるポイントです。右側のダイヤルはライト点灯用。プッシュで押し込む右端のマークの所はメンテナンス用で、点灯無しでリトラを引き出す際に使います。
ウインカーレバーは一般的な棒状のもので、パッシングはそちらのレバーを引いて行います。

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左側はワイパーです。ダイヤルをプッシュするとウォッシャー液を噴射します。他にはリアウィンドウのデフォッガーとパーキングランプ(スバル車がよく採用しているアレ)のスイッチがあります。ハザードスイッチはステアリングコラムの上にあってサンキューハザードがしづらかったり。

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エアコンはなつかしいスライドレバー式のマニュアルエアコンです。英語がやたらと書いてあって今では見慣れない表記が複数見受けられます。上級装備なのかオートエアコンを装備する個体もあるみたいです。灰皿がデカくて使いやすい位置を陣取っているのもまた時代ですね。

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グローブボックスはちょっと小ぶりですが必要十分な容量です。ダッシュボード上面と、このグローブボックスのリッドが横から見ると綺麗なくの字を描いていてデザイン性が高いですねぇ。

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前席は調整幅が広く、一番後ろまで下げると身長175cmの自分が足を伸ばしきることができました。純正シートは硬めが主流になった今時とは真逆で、この頃らしい身体が沈み込むフッカフカのソファのようなシートというのも相まってかなりリラックスして乗ることができました。一日程度の乗車では何ともありませんでしたが、高速で長距離移動するとどうなのか気になるところです。ちなみに純正前席はこんなでもサイドサポートが結構しっかり仕事してくれて好印象です。

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ちなみにセンタートンネルのコンソールにドリンクホルダーが一個だけあります。その後ろは後席用の灰皿になっています(これも時代ですね)。シフトはワイドバンドな5速マニュアルです。街乗りでは4速だけでも充分に感じるシチュエーションが多かったです。クラッチが非常に軽くて扱いやすく、シフトフィールは入りがゴリゴリと節度感を感じられるものでしたが、シフトトラベルが長くて収まりが悪くグラグラするので古めかしい印象は拭えません。またシンクロがへたっているようで1速と3速がやたらと入りづらく、特に発進では気を遣うシーンが多かったです。トップギアでの巡行時回転数はおおよそ60km/hで2,000回転、80km/hで2,700回転程でした。

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後席は前席と同じくフカフカシートです。内張りと背面が連続したデザインがまた凝っていて良いですね。乗車定員が5人なので一応真ん中にも座れるのですが、センタートンネルが通るため真ん中は座面クッションが非常に薄くなっておりお尻がかなり痛く、さらに中央シートベルトなんてのもついていないので実質4人乗りで考えたほうが良いでしょう。その座れる左右席もシートベルトが二点式なのがこれまた時代を感じるポイントです。これで事故には遭いたくないです。

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しかし後席の居住性は想像していたよりもかなり良好で実用に充分耐えます。前席をそれなりに下げた状態でも足先はしっかり前席下に収まり、ヒザの前に拳一個分の余裕があります。

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大人の男が乗ってヘッドクリアランスにも余裕があります。このまま十数キロ移動というのも試してみましたがかなり快適でした。事故さえしなければファミリーカーとしての運用もアリかも!?

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キーにはイニDハチロクのマスコットがついています。こういう細かい心遣いが嬉しいですw

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荷室はハッチバックというだけあって結構広いです。やっぱり実用性は高いです。ただ開口部が上方向のみなので重量物を積み降ろしするようなシチュエーションではちょっと大変そうです。

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シートを倒せばフルフラットに!車中泊だってこなせてしまいそうなラゲッジスペースが生まれます。左側のシートも倒したかったのですが、キャッチレバーが壊れていて倒せなかった・・・。

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床下には36年モノ・・・?当時物っぽいテンパータイヤが収まっていました。ジャッキなどの工具はラゲッジ左のフタ付きスペースの中に格納されています(新しそうなものが入ってました)。

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さてさて肝心のエンジンは名機4A-GEUが搭載されています。1,600ccの四気筒ツインカム、燃料噴射はインジェクションでカタログスペック130PS/6,600rpm、15.2kg・m/5,200rpmを誇ります。ただしこの公称値はエンジン単体で計測したグロス値なので現代の基準で実馬力換算をするとおそらく100馬力程度だったのではないかと思われます。エンジンルーム内は基本的にノーマル状態が保たれています。ラジエターだけご立派なものに変更されていますね。

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スポーツエンジンではあるのですが、乗ってみるとやはりかなり遅いです!車重が軽いのでそれなりに走ってはくれるのですが、体感ではやはり100馬力あるか無いかと言ったところです。加速感を例えると1.5Lのフィットと同じくらい?フィーリングは古いエンジンらしく少し粗雑で回すと振動がビリビリと伝わってきます。巡行時でも結構微振動があります。ただ高回転型ユニットとはいえ下の回転からきっちりトルクが出ているので乗りやすさという面で見ればかなり良好です。また燃費はリッター10km以上走っていたので、下道のみでワインディング中心という条件を考えるとかなり良く感じます。燃費走行を心がければもっと伸びるでしょう。レギュラー仕様なのもお財布に優しいですね。サウンドに関しては快音のイメージを持っていましたが、回したら意外とただウルサイだけであまり感動するようなものはありませんでした。音のこもる室内だからそう感じるかもしれませんが(外から回している様子を聴くとやはり結構良い音してたので)。

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乗った感じはエンジンのほうで大体書いちゃいましたが、他に感じたのは月並みですがボディがコンパクトで走りやすいこと、軽量軽快で身のこなしが軽く、FR故にハンドリングがものすごく素直で乗っていて楽しかったことです。ノンパワステは駐車場や低速コーナリングではかなり大変ですが、スピードが出ればほとんど気にならなくなり、前タイヤとステアリングが直結しているかのようなダイレクト感が心を震わてくれました。それらの運転感覚は軽トラに似ているなとも思いました。貶めているわけじゃなくてドライビングプレジャーの尺度的な意味での例えですよ!w 余計なものがなくてヒトとクルマとの距離がかなり近いんです。乗り心地はゴツゴツしているし、ノイズは色々聴こえるし、あまつさえ閉めた窓からはすきま風も入ってくるし、道具として見ると今時の乗用車のほうが絶対に快適ですが、楽しさにおいて旧車が支持を集める理由の端緒を掴めたような気がします。80年代全開の内装もまるでこの車内空間だけタイムカプセルのようで、様々な長所短所がまとめて飛び込んでくるそんな空間で過ごしているとなんだかものすごいロマンのあることをしているなぁというのを終始感じていました。旧車の味わいとでも言えるのでしょうか、この日の試乗を通してやっぱりハチロクはクラシックカーなんだなと確信しました。次はハコスカやZなどさらに古いクルマをレンタルしてみたいという興味が出てきましたっ・・・!

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友人氏の運転で聖地長尾峠へ。交代で運転した友人はかつて中学生時代にメールアドレスをAE86_GTAPEX的なものにしていたくらいハチロクに憧れていたので、夢が叶ったとものすごく喜んでくれていました。今や神格化が確定的なものになったハチロクを実際に運転して、自分と同じく少なからず衝撃を受けた点もあったようですが、ある意味あじわいとも取れるネガな部分、ポジな部分を話に聞くだけではなく自ら体験できたことはお互いにすごく良い事だったと思います。これを振り回して勝ちまくる藤原拓海がどれだけ神がかっているかというのを身をもって知れたのも良かったですw 人によってはかなり気になると思われるネガな部分を結構書いてしまいましたがそれでもなんだかんだでドライバーズカーとしてこの上ないほどニュートラルで素性が良く、ファントゥドライブで、歴史まである本当に良いクルマだと思います。端正なスタイルは内外装共にとにかくカッコいいですしね。現在中古車を買うとなると完全にプレミアム価格な上、30年選手のハチロクを維持していくのは聞き及んだ話によると、たとえオーバーホールなどを得意とする専門店で買ったとしてもそれこそものすごく苦労するそうです。これからより希少価値を増していく事が火を見るよりも明らかなハチロクを一日中好きに乗り回すことができたのはクルマ好きとしてかけがえのない、本当に良い経験ができたと思います。年齢などの貸し出し条件を満たす人ならお金を払えばこれを誰でも借りれちゃうってすごい事です。ちょっとでも気になった人は借りられなくなってしまう前に是非一度試してみてほしいです。そもそもガソリン車が禁止になる未来すらも見えだしている今、そうなってしまう前にクルマ好きとして乗っておくのにはこれ以上ないほど相応しい、日本のクルマ文化の頂点に立つような名車だと思っています。
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